ジャーナル


シンポジウム「日本型ロースクール」を傍聴して

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「日本型ロースクール」と題した、シンポジウムが7月29日弁護士会館にて開催された。
 シンポジウムは三部構成となっており、第一部ではアメリカおよびカナダでのロースクールの実情報告が、第二部ではロースクール構想を発表している大学代表者によるディベートが、第三部では各関係分野からのパネリストを招いてのパネルディスカッションが行なわれた。
 第一部の海外での実情報告は、日本型ロースクールを構想する上で一定の示唆を与えることを目的とするものなのだろうが、報告内容がアメリカとカナダに関するものだけであったのが少し残念であった。

 第二部の各大学の代表者によるディベートは、提出された資料からは読み取れない、各大学の法科大学院への取り組みの姿勢、また期待が浮き彫りにされたように思われる。
 まず第二部での興味深いポイントは二点あったように思われる。一つ目は、法学部と法科大学院を関連付けるか否かという問題に対する大半の大学の対応であり、二つ目は、ロースクール構想に対する姿勢に大学間でいくつかの傾向があるように感じられたという点である。
 まず一つ目のポイントについてであるが、アメリカ型ロースクールを念頭に置いて法曹家育成にとって必要十分の教育を法科大学院で提供することを前提とすると、学部レベルでの法学部の存在意義をどう捉えるかという問題が生じる。
 この問題に対し、法学部の存在意義はジェネラリストの育成であると答え、存続を主張した場合、次に、学部レベルの教育と法科大学院での教育をリンクさせるべきなのかという問題が生じる。
 これら両者をリンクさせてしまうと、理論的には、ジェネラリスト育成のための教育を法曹家育成の教育の前提条件とすることになり、法科大学院で必要十分の教育を提供するという前提は覆えされる。その結果 、実際上の問題としてもかなり長期間を法曹家になるために費やす必要が生じる。また、他学部から法科大学院への入学を希望するものは最低でも法学部への学士入学を要求されるため、やはり法曹を目指すには最初から法学部に入学することが近道ということになり、多様な人材を取り込むといったような目的も害される。さらに、他大学の法学部出身者を同一に扱うためには、法学部段階での教育内容にも全国で統一性を持たせる必要が生じる。ひいては短期間の間に全般 的な学部改革までが要求される事になる。このような問題を考えると、法学部と法科大学院のリンクは、限りなく抑える、もしくは無くすべきであるように思われる。大学案とは関係無くパネリストとして参加された宮澤教授などは、この点について自己の大学の学生を取り込むためではないかと、特にマンモス法学部を抱える私立大学らに対してかなり厳しい意見を述べられていた。しかし、各大学から法科大学院での教育だけでは足りず、法学部での教育を前提としなければならない事を説明する歯切れの良い回答は得られなかった。必ずしもアメリカ型を前提にしなければ無いわけではないが、日本型として法学部教育を前提にしなくてはならない積極的理由が即答されないというのは問題ではなかろうか。
 二つ目のポイントは、ロースクール構想への取り組み姿勢の上で、中堅地方国立大学、マンモス私立大学とでは明確な違いが窺えるという点である。
 この改革を機に、ほぼ寡占状態の司法試験の現状に食い込もうと考えている中堅地方国立大学は、実務教育の内容についても地元の弁護士会等とも連携することなど具体的な案を提案し、地方の有利性を押し出している。それに対してマンモス私立大学では、現在の合格者数をいかに維持するのか、また維持することを正当化するのか、という点に大学側の意識が集まっているように見えた。当然理論的には、学生数に見合った教員の人数が確保され一定レベル以上の教育を提供すれば、マンモス法科大学院も可能ではある。しかし実際にそのような教育を提供できる施設・人材を確保できるのか、また運営費用をいかに捻出するのかという点でも、この手の私立大学には難問が残される。この点、法学部を資金源として予定すると、やはり法科大学院への入学が有利になるというセールスポイントを法学部に残したいというインセンティブが理論に反して働いてしまう可能性も否定できないのではないか。
 これ以外にも、司法試験をどういった形態にするのか、現在の司法修習と法科大学院で提供される実務教育との関係をどう捉えるのかといった論点についても論じられた。しかし、これらに関しては大学間の相違はあるが、いったん取込まれた学生に関する問題であるからか、大学間での意見の対立が顕著になるよりも、むしろ他の関係者である弁護士会、現在の研修制度といかに折り合いを付けていくのかということに焦点があるように見受けられる。
 
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