| 個人情報の保護をいかに考えるか 個人、企業、メディアにおけるそれぞれの問題点 |
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| 市民の立場から見た個人情報保護法制化
牧野 二郎(牧野法律事務所 弁護士)
はじめに いま、個人情報保護法制かが急ピッチで進められている。事の発端は、住民基本台帳法の改正の際、地方自治体が管理する住民のデータをオンライン化して管理・利用するということから、個人情報の流用や漏洩の危険が指摘され、個人情報保護を徹底させるというものであった。ところが、現在では地方自治体の取り扱う個人情報保護問題に関してはまったく議論されておらず、なぜか、もっぱら民間の個人情報取り扱いに関してのみ法制化が検討されている。 つい先日刑務所の受刑者のデータが漏洩したという事件が報道され、警察からは前歴データが漏れていたという報道もあった。昨年5月宇治市で住民票データ22万件の流出事件が発生したが、その事件では刑事責任は問われず、この6月には漏らした大学生に対して市に400万円を支払うことで決着したという。単純計算すれば、市民一人の個人情報は18円程度しにかなっていない。この事件は、むしろ市の責任を問題とすべき事案であって、一人分18円で解決するような問題ではないはずである。何処か、大きなところで議論を摩り替えられた感じがする。地方自治体、行政庁の責任論はすっぽりと抜け落ちている。 我が国の個人情報をめぐる動きは、見事に我が国の政治的後進性を示しているとしか言いようのない状況である。 何が守られるのか 現在進められている個人情報保護法制度の概要を見る限り、民間に限ってではあるが、保護される個人情報の範囲は広い。あらゆる個人情報が、一応保護の対象となっている。 ただ、保護対象が広いということと、現実に保護されるか、ということはまったく異なった問題である。重要なのは、本当に保護されているかをどう確認するのか、誰が確認するのか、ということ、すなわち、制度の確かさである。更には、違反者にはどのような対処がなされるか、という実効性の担保措置の内容でもある。 本当に保護されているかを監視することは現在の制度ではほとんど考えられていない。本来個々人には自分の個人情報がどう扱われているかを知る権利が保障されなければならないはずだが、これがない。あるのは、どう扱われているか、を知ることではなく、単に事業者の手元に何があるか、だけである。従って、間違っておれば、訂正してください、という内容だけである。これでは正確な情報がほしい事業者の利益保護のための規定である。個人にとって保証されるべきは、何が、どのように利用されているかを知ることである。業者により正確な情報提供を行うことではない。しかも、開示されたものが、間違えたものがあれば直ちに訂正できなければならないはずが、そうなっていない。事業者は訂正申立てに対して、業者の立場で「正当と認める時は、利用目的の達成に必要な範囲で」訂正することで足り、事業者の事業に支障がある時は訂正しなくとも良いといった方向が示されている。結局、事業者の保護であって、個人の訂正権はない。 結局、現時点(9月8日大綱案素案)で示されている制度は、ずぶずぶの、穴ぼこだらけの、実効性のない法律制度であるといって良い。罰則を附けることについても疑問符がつけられているところから見れば、骨抜き法制であるといって良いだろう。これが我が国の、プライバシー保護のレベルである。念の為確認したいのは、日弁連もこれまでこうした大綱案の立場に賛同し、推進役を果たしてきた、という点である。 自ら何をどのように守るのか 個人情報を自らコントロールする権利は、プライバシーの権利であり、国民固有の権利である。IT戦略会議(旧高度情報通信社会推進本部)がどのような法制度を考え様と、それに日弁連が賛成しても、基本的人権であるという事実は消し去ることはできない。なぜなら、それは現実問題として存在するものであるし、たとえ宣明されなくても、法律で定められなくても、社会の中で生成し、定着するものであって、主体たる国民が自ら権利行使できるものだからである。 市民には何ができるのか。 まず、提供する個人情報を明確にし、管理することができる。まず、みずからの情報に個性を与え、その情報の動きを監視することができる。例えば、自宅の住所の後に、ありもしない情報、すなわちA棟とか、B棟とかを附けるだけで、その情報に個性を与えられる。また、怪しげな事業者に対しては、わざと名前を間違える。佐々木信綱と書くべきところを佐々木言綱と書くといったように。これまで、こうした作業で情報漏洩を見破った事例は数限りなくある。 次に、自分の情報を厳重に管理することである。出さないのが良いが、そうばかりできるは限らない。どうしても出さなければならない時は、できるだけ少なく、制限的に出すようにする。必要と思わない事項には答えない。貴重な情報を手放さないことが肝要である。 様々な情報を発信する。個人の趣味など特定されるような特徴的なことばかり書いていたり、発信していると、そうした情報が集積して、偏りのあるデホルメされた人間像が浮かび上がってしまう。そこで、様々な内容の情報を提供し、多様性を確保することが望まれるだろう。人間はいろいろな面を持っているのだから、そうした面を平均だしていけば、少なくとも個性は薄められ、金太郎飴的なデータベースしかできないはずである。そうこうするうちに、こうした個人データの集積が無意味であることに気づくはずである。 最後に、今後個人情報が変な取り扱いを受けていたり、理由不明な不当な扱いを受けた場合などは徹底的に理由を明らかにするように求め、みずからの情報を管理するための権利行為を積極的にする必要がある。聞かれてまずいことはない、と自己情報をオープンにするのは勝手だが、間違えた不当な差別の原因になるような個人情報の取り扱いの間違えには抗議して、訂正させるだけの勇気は持ちたい。 |
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| 牧野 二郎(牧野法律事務所 弁護士) 〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-13-12 西新宿昭和ビル9F
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| 編集部参考資料 |
| 参考サイト |
| 個人情報保護法制化専門委員会(〜首相官邸) 議事要旨や大綱案など。 |
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