ジャーナル


−独禁法違反のリスクは大企業に限らない−
独占禁止法に関わるリーガルリスクマネジメント
はじめに

独占禁止と落とし穴
服部 廣志(服部法律事務所 弁護士)

 「規制緩和」という経済構造改革や法的諸制限の撤廃等の改革が行われ、法的規制が緩和されていっても、現実の「不公正な取引行為等」を放置すれば、自由かつ公正な競争が阻害される。
 法律的、経済構造改革の嵐のなか、平成12年に独占禁止法が改正された理由のひとつでもある。

 独占禁止法については、その禁止される行為類型が公正取引委員会により公表されている。
 不公正な取引方法としての「一般指定」であり、これについての運用指針も公表されている。
 近時の取引社会構造の多様化、複雑化のなかで、公正取引委員会は、前記のような一般的指定以外にも、各種の取引態様にそった独占禁止法の運用基準を公表してきている。ディスクロージャーないしノンアクションレターの開示という社会の流れから望ましいものである。

 近時、知的財産権関係が脚光をあびつつある中、中小企業経営者にとっても、下記のような運用指針等を一読しておく必要はあるものと考える。
 素人の方には、若干難解であるかもしれないものの、「問題の存在」についての「何かあるな」という臭いを嗅ぎ取り、不安になれば専門家に相談に行くという姿勢が必要である。

(1)前記一般指定
(2)特許・ノウハウライセンス契約における公正な取引方法の規制に関する運用基準(平成元年2月15日)
(3)共同研究開発に関する独占禁止法上の指針(平成5年4月20日)
(4)フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について(昭和58年9月20日)
(5)流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針(平成3年7月11日)
(6)その他

 独占禁止と知的財産権の保護とは、一見、拮抗関係にあるようにみえる。
 しかしながら、知的財産権を適正に保護して人間の英知を育み社会発展の基礎とすることと、自由闊達な市場経済の保護とは、矛盾するものではない。
 その調和のなかに、健全な知的財産社会と人間社会の発展があるのである。

 独占禁止と知的財産権の保護の調和という若干複雑な法律関係のなかでは、専門家の助言と指導を受けることが肝要である。
 専門家の指導等を受けなかったがため、予期せぬ事態に発展する場合が少なくないのである。

 世界中の商品が流出入し、これらを取り扱う中小企業が遭遇するかもしれない一例を、並行輸入を例にして説明する。

 外国製品について、真正品を正規総輸入代理店以外の者が輸入販売したとしても違法となるわけではない。
 このようなことは、例えばダイムラークライスラー社の高級外車ベンツを並行輸入業者から購入するということは日常的に行われているところであり、誰もその並行輸入の法律適合性を疑わないからである。
 しかし、だからと言って、他の商品にも同様の理論ないし心構えで対処してよいか否かは別問題なのである。
 ベンツ車に特有と考えられ事項は、次のとおりである。
 (1)あまりにも著名である。
 (2)ベンツ車の偽造品を製造販売する者の登場は考え難い。
 (3)現在まで、現にベンツ車の偽造品が市場に出回った事実に接していない等。
 このような背景が認められる高級外車ベンツ車の並行輸入の場合には、あまり問題も発生しない確率が高いのである。
 しかしながら、他方、さほど著名なものではなく、かつ偽造品が市場に出回っている商品の場合には注意が必要である。
 外国の製造メーカーの商標権を侵害したり、また日本における同商標の専用使用権者の権利を侵害することとなり、並行輸入販売についてクレームを受ける場合があるからである。
 もとより、真正品を輸入している場合、原則として商標権侵害の問題は起きないというのが法理論上の結論ではあるものの、商標権者ないしは専用使用権者から「偽造品であり、商標権を侵害している」という理由で訴訟等を提起された場合、並行輸入をした者は、その取り扱っている商品が「真正品である」ことを自の責任で立証する必要があるのである。真正品であることについての立証ができなかった場合には敗訴することとなる。例え、当該商品が真正品であったとしても、立証できなかった場合には、その裁判手続の中では「真正品と認められない」ということなるのである。
 当該輸入品についての輸入ルートが、堅実かつ誠実に対応してくれるところばかりであれば、「真正品であること」についての立証は、これらの輸入に関与した業者の協力を得て比較的容易であるかもしれない。しかし、他面輸入ルートに介在している業者のなかに取り扱い商品の購入ルート等を明らかにする帳票類の保管管理に問題がある業者がいたり、また保管管理に問題がなかったとしても協力することに消極的な態度であれば、前記立証に窮することとなる。

 これは一例に過ぎない。

 独占禁止と知的所有権の保護
 世界がひとつの市場となった今、この間にある各種の「落とし穴」に注意を払う必要がある。
服部 廣志(服部法律事務所 弁護士)
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