| インターネットデジタル著作権 権利の保護とインターネットの繁栄 |
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| ナップスターと音楽著作権 佐久間 篤夫(牧野法律事務所 弁護士)
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| 日本ではNapsterやこのソフトで交換されるMP3ファイルをめぐる訴訟は未だ例がないようであるが、1999年7月には著作権者である日本音楽著作権協会の許諾を得ずにMP3形式の音楽ファイルを作成し、自分のホームページに掲載した少年が、公衆送信権および複製権侵害の容疑で警察に摘発された例がある。市販の音楽CDやデジタル音楽放送からMP3形式の音楽ファイルを作成することは、それが私的使用を目的とする私的複製の範囲に止まる限りは複製権侵害とはみなされない(著作権法第30条1項)。しかし、不特定多数のインターネット利用者に送信する目的でMP3ファイルを作成することはこの権利制限の範囲外であり、また、当初は私的使用の目的で作成したMP3ファイルであっても、後にこれをホームページにアクセスした誰でもダウンロードできるように掲載すれば、複製物の私的使用目的以外の使用となって複製権侵害とみなされ(法第49条1項1号、第21条)、また自動公衆送信(法第2条1項9号の4)を可能にしたものとして、当該音楽の著作権者の公衆送信権(法第23条1項)の侵害となるとともに、その音楽の実演家や音楽CD製作者の送信可能化権(法第92条の2第1項、第96条の2)の侵害となる。これはNapsterのユーザーがMP3ファイルを作成し、ファイル交換用に自分のパソコンに蓄積する行為についても同様であるが、Napsterを利用したサービスを日本国内で提供すべくサーバーを用意して管理運営する者が負うべき責任については、第三者による著作権侵害に関してサービス・プロバイダの責任制限を定める米国のデジタルミレニアム著作権法に相当する法律が存在しない日本においては、著作権法および民法の不法行為一般の法律構成に従って判断されることになる。 ナップスター社とRIAAとの法廷論争の背景には、Napsterのような音楽ファイル交換ソフトを野放しにしていては、音楽CDが売れなくなるとの音楽業界の危機感があるが、米国ではすでにGnutellaやScour Exchange(スカウア)といった音楽だけでなく映像や文字データも扱える、さらに改良され進化した類似のファイル交換ソフトが現れており、影響は音楽業界以外にも広がりつつある。日本では未だこれらのファイル交換ソフトは普及していないが、いずれ同様のソフトがインターネット上で広まるのは間違いないであろう。 ところで、今年5月16日に東京地方裁判所で言い渡された衛星放送とレコード製作者の複製権をめぐるスターデジオ事件の判決は、視聴者の高音質録音を前提とするデジタル音楽放送の送信が音楽CD製作者の複製権を侵害しているとする大手レコード会社の主張を退け、デジタル音楽放送を利用してMD等に音楽を録音することを容認する判断を示した。原告のレコード会社側は東京高等裁判所に控訴し、この問題についての法的論争は未だ続いているが、東京地裁の判断が支持されると、音楽CDを買う代わりにデジタル放送を受信してデジタル情報として高音質の音楽ファイルを入手することが認められることになる。これに加えてGnutellaのような音楽ファイル交換ソフトが普及すれば、デジタル放送事業者が放送で送信した音楽CDを複製した音楽ファイルの無償交換が、違法ではあるが追及困難であるがゆえに日常化し、一般消費者が音楽CDを買わなくなる事態となるおそれもある。米国の音楽業界には、Napsterに対抗し、インターネットから音楽を取りこむのは無料で自由だ、との認識が消費者に浸透しないうちに、有料の音楽配信事業を普及させようとする動きが出てきたようだが、会社ぐるみで業務用ソフトを違法コピーして使う例が必ずしも珍しくないような日本でも、消費者の間に著作物の利用には対価を伴うとの知識や認識を広く浸透させる必要性は高い。 Napsterをめぐる米国での訴訟も日本におけるスターデジオ事件も、アナログ情報の伝達とアナログ放送を前提として、著作権法により権利関係を処理することで音楽業界の利益を図って来た既存のシステムが、デジタル情報社会化とともに見直しを迫られていることを示している。スターデジオ事件の東京地裁判決も、原告のレコード会社側の主張に一定の理解を示しつつ、なお原告の主張は法律の解釈論を超えるもので、立法論として、または著作権法第97条に基づく商業用レコードの二次使用料の額の決定に際して主張されるべきことであるとしているが、デジタル方式で表現された情報や著作物に関する権利関係の処理については、既存の著作権保護法制の枠内で対処しきれない問題があることを前提として、新たな法制度を構築することも検討に値するであろう。 |
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| 編集部参考資料 | ||||||||||
| 参照サイト | ||||||||||
| 日本音楽著作権協会 Scour Exchange 最高裁判所知的財産権裁判例集 |
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| 参照条文 | ||||||||||
| 著作権法第2条1項9の4号 自動公衆送信 公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。 同法第21条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。 同法第23条1項 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。 同法第30条1項 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
同法第49条1項1号 第三十条第一項、第三十一条第一号、第三十五条、第三十七条第二項、第四十一条、第四十二条又は第四十四条第一項若しくは第二項に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示した者 同法第92条の2、1項 実演家は、その実演を送信可能化する権利を専有する。 同法96条の2 レコード製作者は、そのレコードを送信可能化する権利を専有する。 同法97条 放送事業者等は、商業用レコードを用いた放送又は有線放送を行つた場合(当該放送又は有線放送を受信して放送又は有線放送を行つた場合を除く。)には、そのレコード(第八条第一号から第三号までに掲げるレコードで著作隣接権の存続期間内のものに限る。)に係るレコード製作者に二次使用料を支払わなければならない。
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