ジャーナル


インターネットデジタル著作権
 権利の保護とインターネットの繁栄
はじめに

ウェブページでのキャラクターの盗用と著作権
速水幹由(弁護士・M.B.A)

一 はじめに
 キャラクターファンの開設するウェブページで、キャラクターの画像を掲載する例がみうけられる。著作権法上、キャラクターはどう扱われるのだろうか。また、無断で掲載された場合、権利者にはどのような対処方法があるだろうか。

二 キャラクターとは?
 キャラクターとは、漫画やアニメ、映画、テレビ番組、ゲーム等に登場する架空の人物、動物等の容貌、姿態、図柄、名称、役柄等を総称したものだ。

三 キャラクターは著作物か?
 著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法2条1項1号)。
 漫画やアニメ等の個々のコマの中で描かれた人物や動物等の絵が、美術の著作物として著作権の対象になるのはもちろんである。
 それでは、連載漫画や長編アニメのような場合、個々のコマに描かれた絵そのものではなく、具体的な各絵の集積により抽出された作品全体に一貫するイメージ(視覚的表現によるキャラクターのイメージ)自体は、著作権の対象になるだろうか。
 漫画「サザエさん」の登場人物の頭部画(似顔絵)を観光バスの車体に描いたことが複製権侵害に当たるかが争われた事件で、東京地裁(昭和51年5月26日)は、「キャラクター」を連載漫画に「登場する人物の容ぼう、姿態、性格等を表現するもの」と捉え、「漫画の登場人物自体の役割、容ぼう姿態など恒久的なものとして与えられた表現は、(略)特定の齣における特定の登場人物の表情、頭部の向き、体の動きなどを超えたものである」と解した。そして、「本件頭部画と同一又は類似のものを漫画サザエさんの特定の齣の中にあるいは見出し得るかも知れない。しかし、そのような対比をするまでもなく、(略)被告の本件行為は、原告が著作権を有する漫画サザエさんが長年月にわたつて新聞紙上に掲載されて構成された漫画サザエさんの前説明のキャラクターを利用するものであつて、結局のところ原告の著作権を侵害するものというべきである」と判決した。 
 この判決をめぐっては、具体的表現を離れた漫画の登場人物という「キャラクター」に著作物としての保護を認めたものか否かに関し、理解が分かれていた。
 その後、複製権侵害を理由に漫画の主人公ポパイの絵を含む図柄をネクタイに付けて販売することの差止を請求された事件で、最高裁(平成9年7月17日)は、「キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができない」から、「一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない」と明言した。そして、「一話完結形式の連載漫画においては、著作権の侵害は各完結した漫画それぞれについて成立し得るものであり、著作権の侵害があるというためには連載漫画中のどの回の漫画についていえるのかを検討しなければならない」と判決した。
 但し、これは著作権保護期間の起算点を明確にする必要上、連載の第一回作品が複製されたことを認定しただけで、第一回作品中ポパイが描かれた複数のコマのどれが複製されたかまでの特定は要求していない。
 上記最高裁判決も「複製というためには、第三者の作品が漫画の特定の画面に描かれた登場人物の絵と細部まで一致することを要するものではなく、その特徴から当該登場人物を描いたものであることを知り得るものであれば足りる」と述べているので、具体的表現を離れた「キャラクター」を著作物と認めた場合と比べ、実際上大差はなさそうだ。
 結局、特定のコマの絵をコピーした場合だけでなく、複数のコマの絵によるイメージを表現した場合も複製にあたり、著作権侵害になることに違いはないといえよう。

四 侵害に対する対処
1 本人に対して
 問題のページを開設する本人に対しては、メール、内容証明郵便で警告し、これに応じなければ、仮処分申立や、公衆送信(著作権法23条)差止、損害賠償請求の訴訟提起、刑事告訴等の対処方法が考えられる。
2 本人の特定ができないとき
 問題のページが匿名等で開設されているときは、どうすればよいだろうか。
 刑事告訴は被疑者不詳でもできるが、捜査機関として興味のわく事件でなければ、どこまで動いてくれるか心許ない面がある。他方、仮処分や訴訟のような民事手続きは、加害者本人の氏名、住所等を特定しないとできない。
 この場合、問題のページのデータを蔵置しているプロバイダに対して、加害者の氏名等の情報の開示を求めても、通信の秘密保護との関係で拒絶される可能性が高い。
 ただ、加入者が違法な内容のコンテンツを蔵置したときは送信停止措置等をとりうる旨の規約を持つプロバイダは多いので、とりあえずプロバイダに送信停止を請求してみるとよい。もっとも、プロバイダが自発的に応じてくれないとき、プロバイダの法的責任を追及できるかについては、見解が分かれている(ILC編著+村井純「インターネット法学案内」日本評論社187頁以下所収「インターネットプロバイダの法的責任論」における肯定説<牧野二郎弁護士>・否定説<拙稿>参照)。
3 立法予測
 米国著作権法(512条)では、加入者にデータを善意で蔵置させたプロバイダは、著作権者から通告を受けた後速やかに著作権侵害とされるコンテンツの送信停止措置等を講じるならば、原則としてデータ蔵置につき責任がなく、また最終的に著作権侵害が認定されるか否かにかかわらず、送信停止等についても責任を問われないこと、但し、その場合、プロバイダは、送信停止等にしたことを速やかに加入者に通知しなければならないこと、通告者から加入者に対する訴訟を提起した旨の連絡を受けているときを除き、加入者からの反対通知受領後10ないし14営業日の間に送信停止措置等を解除しなければならないこと、及び、著作権者は著作権侵害者を特定するための情報開示をプロバイダに命ずる令状の発布を連邦地裁書記官に請求できること等を、規定している。
 日本でも、一定の場合にプロバイダを免責する規定を含め、その法的責任を明確化するための著作権法改正が検討されており(2000年7月18日付日経新聞朝刊1面 ・38面)、同様の規定が置かれるのではないかと期待される。

五 結論
 権利者にとって大事なサポーターによる応援活動ともいえるウェブ開設に、些細なことで一々目くじらをたてるのもどうかと思うが、特に目に余るケースを選んで一罰百戒的に法的手段を講じることは、合理的な対処方法といえるだろう。
弁護士 速水 幹由
速水法律事務所(東京都渋谷区)主宰
M.B.A.(経営学修士)
E-mail hayami@m.email.ne.jp
URL http://www.asahi-net.or.jp/~nf5m-hym/
(「PL法とビジネス法務戦略」ほか)

編集部参考資料
 
参照条文
著作権法2条1項1号
著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

同法23条
著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。
2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。

米国著作権法512条
Legal Information Institute
(社)著作権情報センター*和訳
 
参照判例
東京地裁
(昭和51年5月26日)

判時815号27頁

最高裁
(平成9年7月17日

民集51巻6号2714頁
最高裁ウオッチャー

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