| ビジネスモデル特許、その将来性を探る! | ||||
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| ビジネス特許は特許革命か? 古谷栄男(古谷国際特許事務所 弁理士)
1.はじめに 我々、特許の世界に身を置く者にとって、ビジネス特許はソフトウエア特許の特許の一形態であり、目新しいものではない。特に、問題意識を持って研究を行っていた者には、「何を今さら」の感があるかもしれない。 しかし、昨今のビジネス特許騒動を理解する上では、特許制度を取り巻く社会環境の大きな変化と、これに伴って、特許制度の利用の仕方が大きく変わろうとしている点に注目することが重要である。本稿では、法を取り巻く環境という観点からの考察を行いたい。 2.特許制度の本格的利用の始まり 19世紀の産業革命により、製品の大量生産時代が到来した。これに伴って、製品という物に関するアイディアや工夫が、企業経営上重要となった。機械構造物であれ、電気機器であれ、機械的設計図や電気回路図という情報に基づいて製作される。したがって、この設計図や回路図に現れたアイディアや工夫を、特許によって保護することの重要性が認識された時代でもある。 とはいえ、生産設備、販売網などのインフラを持つものと持たないものとの間では、大きなハンディキャップがあった。したがって、特許権だけが、企業競争の勝者を決定する要因でなかったことも事実である。 3.コンピュータとソフトウエア特許 産業革命から、100年を経た1950年ごろには、プログラムを記憶する方式のコンピュータEDSACが登場した。プログラムは情報であり、システムを構築する上での設計図としての役割を持っている。しかし、同じ情報でありながら、機械的設計図や電気回路図と決定的に異なる点は、プログラム自身が、システムの一部分を構成するということである。機械構造物における設計図はその機械構造物の部品ではないが、プログラムはシステムの部品として位置づけられるのである。つまり、プログラムは、それ自身がハードウエアに対して機能する機能的情報であるといってもよい。上記のように、コンピュータの出現によって、物の一部分が機能的な情報として分離可能となったのである。 ソフトウエアに関し、特許による保護が妥当であるか否かが議論されたこともあった。しかし、上記のように、ソフトウエアは物の構成要素(つまり一部品)であるから、特許対象とすべきであるのは当然なことであろう。また、ソフトウエア産業の重要性に鑑みれば、ソフトウエアだけを特許の保護対象から除外することは、適正な競争による発展を阻害することになりかねない。 ソフトウエアの世界においては、同じ物を大量生産することは極めて簡単である。この点、従来の製造物とは大きく異なる。したがって、ソフトウエアの分野においては、生産設備に対する大きな投資が不要であり、相対的に、特許権が企業競争の勝者を決定付ける要因として大きくなった。ソフトウエア特許に対する反対が生じたのも、その影響度が大きい点に起因していると思われる。 4.インターネットとビジネス特許 コンピュータの出現を経て、インターネットが登場する。インターネットの発展によって、情報の交換・共有が容易になったと言われるが、電話やファクシミリなど情報交換の手段は古くからあった。インターネットは、世界のコンピュータをつなぎ、システム化した点にこそ意味がある。そこでは単なる情報の交換だけでなく、ソフトウエアという機能性情報の交換や共有が起こっている。たとえば、ウエブサーバに用意された機能は、インターネットに接続された端末コンピュータによって、世界中どこからでも利用できる。 このようなインターネットの発展は何をもたらしたであろうか。販売網形成の投資を不要にしたのである。デルコンピュータやプライスラインの成功を見れば、明らかである。ここに至って、ビジネスのアイディアの優劣ならびにその特許権が、企業競争の決定的要因として浮上した。企業規模の大小を問わず、アイディアの優劣を競う時代が到来したのである。ビジネス特許として騒がれているのは、そのためである。 5.まとめ ビジネス特許は、インターネットの発達した今日、社会への影響が極めて大きい。したがって、ソフトウエア特許論争の時よりも、さらに大きな規制論が出てくる可能性がある。しかし、ビジネス特許は、古くから出願され特許も取得されている。法律や運用に劇的な変化があったのではない。むしろ、上で述べたように、法律制度の外部にある社会的・経済的環境が大きく変わったために、ビジネス特許の重要性が高まったのである。 ビジネス特許についての法的な取扱がどのように変化するのかは予想できない。しかし、IT革命を止めることはできないのである。したがって、企業経営における特許の重要性が増していくことは間違いない。IT革命とともに、特許革命が進行しているのである。 IT分野だけでなく特許全般を見渡しても、米国では、すでに、IBM、ゼロックスなどが、独占のための特許という観点だけでなく、企業のキャッシュフローを得るためのツールとして特許を運用し、これを成功させている。IBMは、10年前わずか3千万ドルほどであったライセンス収入を、10億ドルにまで成長させた。また、パテントポートフォリオを形成するために、特許を目的としたM&Aも盛んになりつつある。 このように、企業における特許制度の利用が革命的に変化しはじめている。ビジネス特許は、このような特許革命を象徴する一例にすぎない。 |
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古谷栄男(古谷国際特許事務所 弁理士)
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