| ビジネスモデル特許、その将来性を探る! | ||||
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| ビジネスモデル特許に国際的指針を 本庄 武男(本庄国際特許事務所 弁理士)
平成11年12月8日付け朝日新聞論壇において、筆者は既存のビジネスの手法を単にコンピュータ処理したに過ぎないビジネスモデルは、特許すべきでないとの明確な指針を公表するべきであるとの意見を公表した。これに対して特許庁は機敏に対応し、同年12月22日公表の同庁ホームページにビジネス関連発明の審査における取り扱いについてという方針を公表し、従来より人間が行っている業務をシステム化し、コンピュータにより実現しようとすることは、通常のシステム分析手法及びシステム設計手法を用いた日常的作業で可能な程度のことであれば、特許性は否定されることを公表した。これにより、当時社会に蔓延していた潜在的不安が解消されたことは、有意義であった。 ところでビジネスモデルについて、上記陳腐化したビジネスの特許化と同様に重要なテーマは、たとえ新しいビジネスであっても、無制限に権利範囲の広い特許権を認めてよいかと言う問題である。この点について、ビジネスモデル特許について一歩先を行く米国では、あまりにも広い権利範囲を有するビジネスモデル特許に対する批判が相次いでいる。中には、ビジネスモデル特許の権利期間を短縮するべきであると言った意見もある。しかし、いずれの議論も、発明の中身を十分に吟味したものとは言いがたく、ましてや、定義も明確でないビジネスモデル特許の権利期間に言及するなど論外である。 この点、筆者は、たとえビジネスとして新しいものでも、ビジネスの定義そのものを権利請求するような発明は、特許するべきではないと思料している。例えば、米国特許第5794207は、逆オークションと呼ばれ、取引上の購買者が自分で決めた買値(指し値)を代理店が複数の販売者に知らせ、これに応じた販売者が落札するという一種の入札システムをネット・ワーク上で達成することを権利請求するものである。また、米国特許第5884274号は、外貨建て保険システムと呼ばれるもので、利用者が指定する外貨について、データベースにアクセスして、所望期間についての通貨の変動性を見積り、この通貨の変動性を元に保険の掛け金を演算すると点を権利請求するものである。 ここに例示したものは米国や日本に出願されているものの一部であるが、上記特許の権利請求の範囲の記載が、コンピュータを用いることを除いて、当該逆オークション、あるいは外貨建て保険と言うビジネスの定義そのものになっているものである。かかる記載によって表現される発明が特許された場合、当該ビジネスそのものを独占し、極めて広い権利範囲をゆうすることになることは自明であろう。 ビジネスモデルの内特許されうるものは、上記特許庁の公表した方針においても、ソフトウエア関連発明に分類されているし、このことは筆者も認めるところである。ところで、ソフトウエア関連発明の内、演算方法そのもの、即ちアルゴリズムは、日米欧いずれにおいても特許されない扱いになっている。これは、かかる発明を特許することは、アルゴリズムの先取りになると言う論理が根拠である。 しかしながら、このことは上記ビジネスの定義そのものに相当するビジネスモデルについても当てはまる。即ち、このようなビジネスの定義を権利請求する発明はビジネスそのものを先取りし、いかなるハードウエアあるいはソフトウエアを用いても、そのビジネスを実施する限り全てそのビジネスモデル特許を侵害することになるからである。 ではビジネスを先取りすることがなぜ問題なのであろうか。 この問題を解くには、特許法そのものの根源を考える必要がある。特許法が保護の目的とするのは技術的創作物(発明)である。このことは洋の東西を問わない。技術というものは、人間の欲望が続く限り常に改良が加えられ、その結果、いま新しい斬新な技術もいつの日か陳腐化する。それゆえ、特許法は新しい技術的創作に独占権を設定しうるのである、逆に言えば、発明は常に陳腐化する性質を持つが故に、安心して独占権を付与しうるのである。ところが、ビジネスには陳腐化という現象がない。例えば、オークション(競り)と言ったビジネス手法は、紀元前から存在し、今なお取引の代表的手法として君臨していることからも自明であろう。ビジネスに陳腐化現象がないかどうかは、歴史が教えるところである。その意味から、ニューヨーク・タイムズが、ビジネスモデルの特許性について歴史家の意見を聞いた(2000年4月10日付けニューヨーク・タイムズ参照)のは、適切であったが、議論をビジネスの陳腐化ということに絞れなかったために、収束性のない議論になったのは残念である。 先に例示したアルゴリズムも、実はそれ自身陳腐化しない故に、私人の独占に適さないことが、特許の対象とされない根源的理由である。 このように考えると、上記ビジネスそのものの定義に相当するようなビジネスモデルについて特許することは、アルゴリズムの特許性を否定する世界的な見解と矛盾することは明確であろう。 今、米国では、アマゾン・コム社の、いわゆるワン・クリック・特許といわれる特許に批判が集中している。しかし、この特許の場合は、(詳細は省略する)インターネット閲覧ソフトに従来から備わったクーキーと呼ばれる手法に用いたもので、それ自身極めて技術的な内容であり、上のビジネスの定義を権利請求するものとは一線を画す。筆者は、これは、クーキーのような技術的手法を転用することに対する技術の高度性(日本では進歩性、米国では自明性と呼ばれる)の問題として処理するべきで、その効力を特別扱いするべきものではないと考える。その証拠に、アマゾン・コム社の上記特許の場合、代替技術が成立可能である。 日米欧3極特許庁は、重要問題について継続的な話し合いをしている。昨年の11月会合では、日本国特許庁は、ビジネス関連発明についても比較研究を行うことを提案すると共に、日米の専門家により検討を開始し、日本特許庁が中心となって比較研究の報告書を作成し、2000年の6月に東京で開催される三極特許庁専門家会合において、報告書の採択を目指すとしているが、次回の会合においては、上に述べたビジネスの定義そのものに相当する表現の発明について、十分慎重に議論して頂きたいものである。 |
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