| ネットJ「くらしの法律相談」バックナンバー |
| (Q) 未成年アイドルの顔写真を使ったアイコラは『児童ポルノ禁止法』違反!? |
| (A) ウェブ上に掲載した場合は、『児童買春・児童ポルノ禁止法』の"児童ポルノの公然陳列罪"に問われる可能性があります。さらに写真が無断流用ならば、肖像権や著作権侵害、刑法の"侮辱罪"等、民事上及び刑事上の責任を問われる可能性があります。 |
| いわゆる『児童買春・児童ポルノ禁止法』に関して、このケースでは、同法第7条の"児童ポルノの公然陳列罪"に該当するか否かが焦点となります。18歳未満の女性アイドルの顔部分と、成人女性の裸体写真を合成した、いわゆる"アイドルコラージュ"(アイコラ)をウェブ上に掲載する行為が同罪に該当するかどうかは、争いのあるところですが、処罰される可能性は否定できません。 元来、児童ポルノは刑法の"わいせつ"概念を前提にすると、そのほとんどがわいせつに該当せず、処罰の対象になりませんでした。最高裁はわいせつの概念について、「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」と定義していますが、幼児の裸の写真などは「徒に性欲を興奮」させるものなどとはいえず、わいせつ物とは認定し難く、刑法の"わいせつ物頒布等の罪"での処罰が困難でした。 被写体の同意を伴う成人ポルノ等と異なり、未成熟な児童は性知識に乏しいのが普通です。また、児童がポルノ的な写真の意味もわからず被写体になり、ポルノ業者や"ペドファイル"(幼少児童に対する特殊な性癖を持つ者)の性的搾取、性的虐待の対象になることは、児童の性的自己決定権の侵害です。そこで、児童ポルノ規制の必要性が高く認識されるようになり、児童ポルノ禁止法では「児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性に鑑み……」、刑法が適用されない場合でも"児童ポルノに係る行為"を処罰できるようにしたのです。 『児童買春・児童ポルノ禁止法』 制定目的と適用範囲 アイコラが"児童ポルノ"に該当するかどうかは、児童買春・児童ポルノ禁止法の制定目的の捉え方によって結論が違ってきます。まず、制定目的を"被害者たる児童の権利保護"と捉えた場合──製造過程で性的搾取及び性的虐待が存在しないアイコラのようなデジタル合成写真は、"児童ポルノにあらず"となります。これに対し、制定目的を被害者たる児童の権利保護だけでなく、児童を性欲の対象にする風潮の助長を防止するためとか、身体的・精神的に未熟な児童の心身の成長に悪影響をおよぼさないようにするため(児童の健全育成目的)と捉えた場合──仮に児童ポルノの製造過程に性的搾取及び性的虐待がなかったとしても、アイコラは児童を性欲の対象にする風潮を助長する恐れがあるとして、"児童ポルノである"と考えられます。ただ実際は、このような立場をとったとしても、コンピューター・グラフィックス(CG)で作成されたデジタル画像は"実在する児童"とは言えないという理由で、画像自体は児童ポルノに当たらないと考えられているようです。 筆者としては、『児童買春・児童ポルノ禁止法』自体は、性的搾取及び性的虐待の対象となっていた児童を保護するために制定された初めての法律として、高く評価されるべきものと考えます。しかし、性的被害者である児童の保護目的を超え、児童一般の健全育成を強調することで処罰範囲を不当に拡大させるのは重大な問題であると考えます。同法第3条の「この法律の適用にあたっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない」という規定の趣旨からして、国家による安易な刑罰権の行使は慎まなければなりません。 しかし、合成写真等を利用した疑似ポルノも"実在する児童の姿態"の描写だと認定できる場合があるという主張もあり、警察庁側がこのような見解のもと、アイコラのウェブへの掲載を児童ポルノの公然陳列罪に該当するとして摘発する可能性があります。この点くれぐれも注意しなければなりません。 なお、ウェブ上に児童ポルノをアップロードした行為が、"公然陳列"に該当するかについて、インターネットに関する"わいせつ物陳列罪"の成否の議論と同様、厳しい考え方の対立があります。本法はインターネットに関して特別な規定を置いていませんが、立法者側では児童ポルノ画像のデータが記録されたハードディスク等を"児童ポルノ"と捉え"公然陳列"に該当すると考えているようです。しかし、インターネット上ではデータの送受信が行われているだけであって、データの陳列をしているわけではなく、従来の"陳列"という法概念とは相容れないのではないかという疑問が残るところであり、本法の改正も含め見直し措置が必要と考えます。 最後にこれらの問題のほかに、アイドル写真の無断使用自体、肖像権及び著作権の侵害、侮辱罪成立の可能性があり、アイコラのウェブ上への掲載は絶対に行なってはなりません。 (佐々川法律事務所 弁護士 佐々川直幸) |
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| 【児童買春・児童ポルノ禁止法】 正しくは、『児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律』('99年11月1日より施行)。'89年11月に子どもの権利保護を目的とした「児童の権利に関する条約」が国連で採択され、'94年4月、日本も同条約を批准したが、国内法が未整備であったため、「日本はチャイルドポルノの発信元である」といった国際的な批判を受け、本法が制定されるに至った。 【児童ポルノ頒布等の罪】 『児童買春・児童ポルノ禁止法』第7条1項では、「児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する」と規定。 【侮辱罪】 「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する」(刑法231条)。アイコラはあたかもアイドルのヌード写真であるかのような印象を見るものに与え、アイドル本人の名誉感情を害するとして侮辱罪が成立する可能性がある。 |
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