ジャーナル


ネットJ「くらしの法律相談」バックナンバー

(Q)
米国で人気の「ファンタジーベースボール」に日本から参加したら賭博罪?
(A)
参加費ほかを徴収するような有料サービスで、かつ賞品や賞金を獲得できるようなファンタジーベースボールならば、日本の刑法上、参加者は賭博罪に問われる可能性があります。たとえインターネット経由で海外のファンタジーベースボールに参加したとしても同様です。
 
 
一般的にファンタジーベースボールとは、現実の野球選手の成績に基づいて参加者自身が好きな選手を集めて架空のチームを結成し、他の参加者が結成したチームと勝敗を決するという種類の仮想ゲームです。ファンタジーベースボールでは、現実のペナント・レースで変化する選手の実績をそのままゲームへ反映させていくため、自分が結成したチームのメンバーとして選んだ選手の実際の試合での活躍も俄然気になる、そんな面白さも味わえます。
 野球のほかにも、ファンタジーバスケットボールやファンタジーホッケーなど、各種のスポーツを題材にしたファンタジーゲームがあり、なかには参加料ほかを徴収し、好成績を残すと賞金や賞品などが贈られるゲームもあります。一方で、日本のプロ野球人気に着目して、日本向けに、日本のプロ野球を題材にしたファンタジーベースボールの日本語のホームページを作成して提供しようとする動きもあるようです。筆者も最近、実際に海外のファンタンジーベースボールのサービスプロバイダーからいくつかの問い合わせを受けました。

海外のギャンブルサービス
日本で利用するなら刑法違反

 日本人が日本国内からインターネットを通じてファンタジーベースボールに参加する際、そのサービスが“有料”かつ“賞金や賞品”が提供される場合は、賭博として日本の刑法が適用される可能性がありそうです。また、刑法の適用範囲に関する判例及び学説は、「犯罪行為の一部分でも日本国内で行われれば、その行為に対して日本の刑法が適用される」と判断しています。つまり、金銭授受が伴うギャンブル性のあるゲームは、たとえアメリカのサーバーから提供されるものであっても、日本にいながら参加した場合は、日本の刑法上では、賭博罪が成立する可能性があるというわけです。
 日本の刑法では、賭博とは、偶然の事情により左右される勝敗の結果に対して金銭等を賭けることをいいます。けれども、ファンタジーベースボールは──(1)「自分のチームからどの選手を試合に出すか、誰をトレードにかけるかといった参加者自身の技術に依存する要素がある」、(2)「金銭が賭金ではなく参加料として支払われ、なおかつ参加者への見返りは“払戻し金”ではなく“賞金や賞品”として与えられる」──このような要素があるため、従来の賭博と異なり、ファンタジーベースボールは賭博に当たらないと考えることもできそうです。
 しかし日本の判例では、「ゲームの勝敗を決する要素として技術的要素がある場合でも、勝敗が偶然の事情によって影響を受けることがある場合には賭博に当たる」と判断しています。したがって、参加者の技術の巧拙がゲームの勝敗に影響を与えることがあっても、実際の選手のペナントレースにおける成績という参加者がコントロールできない偶然の事情が介在する以上、ファンタジーベースボールは賭博とみなされてしまう可能性があります。同様に、判例によれば、「参加者からゲームの主催者への支払いが賭金ではなく参加料という形式をとっており、参加料が賞金やゲームの運営費用に充てられる場合であっても、参加料が賭博の賭金である」とみなされる可能性があります。

有料のファンタジーゲームは
日本では賭博罪の可能性あり

 結論として、日本の刑法の下では、“有料”でありかつ“賞金や賞品”が提供されるファンタジーベースボールに参加することは、「偶然の事情により結果が左右される勝敗に対して金銭を賭けた」とみなされ、“単純賭博罪”が成立する可能性が高いといえます。また、長期間にわたって反復継続するような有料ファンタジーベースボールに参加する場合には、“常習賭博罪”が成立する可能性があります。一方、有料であったとしても、それは参加料のみで賞金や賞品といった一切の見返りがない場合や、もともとサービスの利用料が無料ならば、刑法上の問題はありません。
 アメリカでは、ファンタジーベースボールの勝敗には参加者の技術的要素が関係するため、原則としてギャンブルとは見なされておらず、各種の類似のサービスが提供されて人気を博しているようです。しかしながら、ファンタジーベースボールは、有料サービスの場合、日本においては賭博罪に当たる可能性が高く、日本の野球ファンにとっては文字通りファンタジーで終ってしまうゲームと言えそうです。

(弁護士 石川耕治 神田橋法律事務所/ホワイト&ケース外国法事務弁護士事務所)
参考
ESPN Fantasy Games
スポーツ専門チャンネルとしておなじみESPNの有料ファンタジーゲーム。北米などの居住者限定のサービスだ。
キーワード
【単純賭博罪】
つい出来心で賭けごとをしてしまったというように、継続的とはみなされないときは、単純賭博罪として、50万円以下の罰金又は科料となる(刑法第185条)。
【常習賭博罪】
ダメとは知っていながら賭けごとがやめられないといった賭博常習者は、3年以下の懲役だ(刑法第186条第1項)。
 
 
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