ジャーナル


ネットJ「くらしの法律相談」バックナンバー

(Q)
有名人の似顔絵や雑誌のタレント写真を個人のホームページへ掲載してもいいの?
(A)
雑誌の写真も著作物なので、著作権者の許諾を得なければ著作権侵害となります。また、タレントなどの著名人の場合、本人の承諾を得ずに彼らの写真や似顔絵を掲載すれば、肖像権やパブリシティ権を侵害したとして損害賠償請求を受ける可能性もあります。
 
 
 あるタレントのファンが、私設ファンクラブのホームページに掲載する素材として、雑誌に掲載されていた"写真"をスキャンして使おうとしたところ、違法ではないかとの指摘を受けました。それならこんどは、タレントの"似顔絵"を友人に描いてもらい、似顔絵の著作権者たる友人の許可を得てホームページへ掲載するなら大丈夫なのでは、という相談です。
 回答は、"雑誌の掲載写真のホームページへの転載"と"タレント写真や似顔絵の利用"の2つに分けて考てみましょう。

雑誌写真などの無断転載は
ウェブ上でも著作権の侵害

 まず、雑誌掲載写真の利用に関してです。写真は著作物として著作権法の保護を受けます。そのため原則として、著作権者が"複製権"や、アップロードする権利("送信可能化権"と言います)とウェブ上で送信する権利("自動公衆送信権"と言います)を持ちます。つまり、写真をホームページに転載したり、ダウンロードできるようにする権利は、著作権者が持っているのです。
 たとえば、写真をスキャナーで読み込み、画像データを自分のホームページに取り込んだとしたら、それは著作物である写真の複製が行なわれていることになります。したがって写真の著作権者に、複製についての許諾を求める必要が生じます。ちなみに、雑誌に掲載されている写真の場合、写真の撮影者か雑誌の出版社が著作権者であることが多いようです。だから、雑誌の写真をホームページに載せたいというときは、あらかじめ出版社に問い合わせてみるべきです。
 もっとも著作権法は、"私的使用"のための複製は許されると規定しています。ホームページへの掲載が著作権法の定める"私的使用"に該当するならば、著作権侵害にならないわけです。ちなみに著作権法で規定する"私的使用"とは、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」です。
 雑誌から写真を私設ファンクラブのホームページに転載することは、一見"私的使用"に該当するように思われるかもしれません。しかし、だれもがアクセスできるインターネット上のホームページへの転載は、「家庭内での利用に準ずるほどの狭い範囲における利用」と言うのは困難だと考えられます。したがって本件は、私設ファンクラブといえども、著作権法で認められる私的使用には該当しないと考えるべきでしょう。
 なお、私設ファンクラブのページが会費などを取らない仕組みであったとしても、営利目的の有無は複製権の侵害行為の有無の判断とは直接関係はありませんので、心得ておきましょう。
 また、スキャンした画像をサーバーにアップロード("送信可能化"状態に)し、ホームページ上で公開(アクセスしてきた人へ"自動公衆送信")することも、基本的には著作権者の許諾が必要です。なお、送信可能化権は自動公衆送信権に含まれるので、自動公衆送信についての許諾をもらえば問題ありません。
 著作権法は、著作権者が「著作権侵害行為について権利侵害行為の差止の請求、および損害賠償の民事上の請求」ができることを規定するほか、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」という刑事罰も規定しているので、著作権侵害行為には、十分に注意しましょう。

タレントなら肖像権と
パブリシティ権も問題に

 次に、著作権の問題が解決されている場合、つまり著作権者の許諾をすでに得ている際のタレント写真または似顔絵の利用について考えてみます。このとき問題になるのが"肖像権"と"パブリシティ権"に関してです。肖像権はだれもが有する権利ですが、その被写体が著名人の場合は、さらにパブリシティ権という財産権上の権利が生じます。
 たとえ、個人のホームページに載せようとしているのが、タレントの似顔絵やリトグラフであっても、第三者が見たときにそのタレントだとわかるくらい似ているものであれば、写真でなくとも、パブリシティ権を侵害している可能性があります。したがって、タレントの似顔絵などをホームページに載せる場合には、本来、そのタレントの承諾を得る必要があるものと認識すべきです。さらに、もし雑誌に掲載された写真について著作権者からの許諾を得た場合でも、同様に掲載について改めてそのタレントからの承諾を得る必要があるわけです。
 つまり、もしタレント本人の承諾を得ずに写真や似顔絵などをホームページに掲載した場合は、著作権者からの許諾を受けているか否かにかかわらず、そのタレント本人から肖像権やパブリシティ権にもとづいた損害賠償の請求を受ける可能性があるのです。

(八重洲法律事務所 弁護士 金野志保)
キーワード
【送信可能化権】
著作物をインターネット上のサーバーにアップロードし、パソコンなどのネット上の端末からアクセスできる状態にすることができる権利。
【自動公衆送信権】
ユーザーの求めに応じて(オンデマンドで)自動的に情報を送信する権利。つまり、著作物をホームページで閲覧、ダウンロード等をさせることのできる権利。
【肖像権】
自分の容姿(肖像)をむやみに撮影されたり、公表されたりしない権利。人格権に含まれており、だれもが有している。
【パブリシティ権】
著名人の氏名、肖像を商品の宣伝や広告に利用すると、その著名人の顧客吸引力により、販売促進に効果が上がるが、その著名人がこの経済的利益を排他的に(他人に干渉されずに)支配する財産的権利を有するとされる。この財産的権利パブリシティ権と呼ぶ。
 
 
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