| ネットJ「くらしの法律相談」バックナンバー |
| (Q) 掲示板で名誉を傷つけられた!! 被害を訴えるにはどうしたらいい? |
| (A) 明らかに名誉を毀損するような書き込みがなされた場合には、投稿者に損害賠償を請求できます。しかしながら、投稿者の住所・氏名についてプロバイダーは"通信の秘密"を根拠に教えてくれないことが多いようです。弁護士を通じて法的に情報を開示するように請求しても実際には極めて困難です。 |
| 法的な損害賠償請求には 加害者の特定が必要 質問のように、名誉を毀損するような書き込みがあった場合、まず掲示板の主宰者やプロバイダーにその書き込みの削除を求めましょう。悪質な書き込みの場合、誠実に対応してくれるはずです。しかし、プロバイダーに抗議しても何ら方策をとってくれないなら、プロバイダーの責任を追及することも考えられます。 投稿が削除されたからといって、すでに生じてしまった被害が解消されるわけではありません。投稿者に対しては、書き込みの内容にもよりますが、民法上の不法行為責任が成立するので損害賠償を請求できます。ただ、投稿者の氏名・住所を特定しない限り裁判は起こせません。というのは、実際の裁判では原告が"訴状"という書面を裁判所に提出したのち、裁判所から被告に訴状が届けられなければならないからです。これを"送達"といい、被告の氏名や住所(勤務先などでもよい)がわからなければ訴状の送達がでないので、裁判を開始できないわけです。 では、投稿者を特定するにはどのような方法があるのか。質問のような事例が多くなってきたことから、弁護士としても、これまで次のような手段で投稿者を特定を試みてきました。 (1)弁護士法・第23条の2に基づく照会──これは、弁護士が弁護士会を通じて、公務所または公私の団体に照会して必要事項の報告を求める制度です。これを用いてプロバイダーに照会した例もありますが、実際にはプロバイダーから"通信の秘密"(電気通信事業法第4条)に該当するという理由で拒否されてしまうことが多いようです。 (2)違法な書き込みを放置したという理由でプロバイダーに対し訴訟を起こす──裁判で被告となったプロバイダーに投稿者の住所・氏名の開示、契約書や会員名簿の提出を求める方法が考えられます。ただ、これも"通信の秘密"や「プロバイダーを被告とする裁判のなかでは、投稿者の住所・氏名は直接関係がない」ということを理由に、開示を拒絶されるおそれがあります。なぜなら、投稿者の住所・氏名が不明でも原告の勝訴・敗訴を判断できるからです。 (3)「投稿者の氏名、住所を開示せよ」とプロバイダーを提訴──"開示せよ"と強制する法律が存在せず、開示を求める原告側の法的権利が明確でないため、この方法での解決は、実際にはなかなか難しいようです。 C氏名不詳の投稿者を特定するためプロバイダーに対して証拠保全を行使──証拠保全の手続きをしても、実際にはプロバイダーが投稿者情報を開示せず、不能に終わるケースが多いようです。 (4)警察に被害届を出したり、被疑者の氏名不詳のまま告訴──裁判所の令状に基づいて警察が強制捜査を行なえば、プロバイダーも資料を出さざるを得ません。とはいえ、投稿内容があまりにひどく、たとえばいたずら電話やいたずらメールなどの二次的被害を引き起こしているような場合でないと、なかなか告訴状を受理してもらえないようです。投稿者を特定させるために、現在もっとも有効な手段ではありますが、必ずしもすべてのケースで使えるとは限りません。 通信の秘密と被害者保護 バランスのとれた法整備を 結局、裁判所の令状に基づく強制捜査がなければプロバイダーは電気通信事業法・第4条の"通信の秘密"を根拠に、投稿者の住所・氏名を開示することはほとんどないようです。通信の秘密には、通信の内容だけでなく通信当事者の氏名や住所も含むと考えられ、通信の秘密を侵した場合の罰則もあります(同・第104条)。したがって、プロバイダーが契約者の住所や氏名を被害者に教えてしまうと、「通信の秘密を侵した」として契約者から訴えられたり、刑事処分を受けたりする可能性があるのです。 プロバイダーとしては、このような投稿に対する苦情は当事者同士で処理して欲しいところでしょうし、通信の秘密にしばられて教えたくても教えられない立場におかれてしまっているのです。 通信の秘密という概念は表現の自由やプライバシー権とも関連する大事なものですが、だからといって匿名性を利用して名誉を毀損するような書き込みをする加害者を、のさばらせたままにしておくのは、何かおかしい気がします。一定の場合には、被害者の求めに応じてプロバイダーが加害者の住所・氏名を開示できるよう立法がなされるべきですが、とはいえプロバイダーが簡単に契約者の個人情報を開示してしまうこともまた問題です。被害者の保護と個人情報の保護においてバランスのとれた、加害者情報開示の制度が検討される必要があるでしょう。 (弁護士 梅村陽一郎 梅村法律事務所) |
| 通信の秘密 |
| 電気通信事業法・第4条で、「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない」「電気通信事業に従事する者は、(中略)通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない」と規定。罰則は、「通信の秘密を侵した者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」「電気通信事業に従事する者が前項の行為をしたときは、2年以下の懲役又は50万円以下の罰金」(同・第104条)である。 |
| "削除する権利"が法制化!? |
| インターネット上の掲示板などに掲示される人権侵害や著作権侵害など、違法・有害情報をプロバイダーが削除できるとすることを定めた法律案を、11月27日、郵政省は次期通常国会に提出すると決定した。また同省は、発信者の氏名の開示がないと民事訴追できないといった問題への対処も検討するとしている。そのため、表現の自由や通信の秘密と比較しながら、一定の範囲内で発信者情報の開示が求められるようにするといったことも、同法律案に盛り込もうとしているようだ。 |
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