ジャーナル


ネットJ「くらしの法律相談」バックナンバー

(Q)
料金滞納でプロバイダーがサービス停止
届いたはずの私のメールはどうなるの?
(A)
メールの未着や不着、突然のプロバイダーサービス停止など、インターネットのサービスは、すべてにおいて確実性が保証されているものではありません。もし、メールを送られた可能性があるなら、送信者に、電話など別の手段で連絡を取りましょう。基本的にインターネットは"自己責任"の世界なのです。
 
 
インターネットの世界に
管理者は存在しない

 質問者は、プロバイダー料金を滞納したためにサービス解約を通知されました。解約される前日、仕事上で重要な電子メール(以下、メール)が届いていることがわかり、それを入手する手段はないか、と考えていたようです。しかし、残念ながら"不可能"と言わざるを得ません。その理由を、インターネットの事情とプロバイダー契約の両面から考えてみます。
 まず、ひとつの重要な事実があります──インターネットの世界には管理者は存在しない──ということです。メールひとつを取っても、送信元のプロバイダー、中継するキャリアー、受信側のプロバイダーというようにリレーされ、多数の通信業者を経由して送信されます。が、これら複数の通信業者等を一元管理する機構はないのです。
 たとえば、送信されたメールが通過、経由する複数の通信業者のうち、ひとつの業者の通信機器に故障等が発生し、送信が中断され、メールが送信されない場合も当然ありえます。このように、送信したメールが相手方に必ず到達するという"保証はない"のです。
 インターネットという世界を一元的に管理している人がいれば、なぜメールが送信されなかったのかなどについて、調査し、原因を探求することが可能かもしれません。しかし、そのような管理者は、インターネットに存在しません。インターネット接続サービスの世界においては、"間違いなく"という言葉はなく、"ベスト・エフォート・サービスの提供"ということが言われ、それがプロバイダー業界の通念ないし常識とされています。つまり、「最善の努力をするように務めますが、できなかったらごめんなさい」ということなのです。

プロバイダーとの契約は
"接続サービス"が核

 インターネットの接続契約については、各プロバイダーごとにその内容が多少異なりますが、各プロバイダーの規約を読めばわかるように、プロバイダーとの接続契約の中心サービスは、"インターネットへの接続サービス"です。
 多くの場合、接続サービスの利用停止については──「サービスの利用停止をする際は、事前にその理由、利用停止をする日及び期間を会員に通知します。ただし、緊急やむを得ない場合は、この限りではありません」──などと規定され、また、接続契約の解除の場合は──「会員契約を解除しようとするときには、事前にその旨を会員に通知します。ただし、緊急やむを得ない場合はこの限りではありません」──などとと規定されています。このような規約ないし契約は、法律上、一応有効と考えられます。
 いずれにせよ、緊急でない限り、利用停止や契約解除の事前通知がなされることになっています。その通知を受けた段階で、今回の質問のような"取り残しメールがないようにする"といった措置を、利用者自信が講じておくべきなのです。

ネット社会は自己責任の世界
"物"を預かるサービスではない

 また、メールのサービス提供についても、"物を預かってもらっている"というような理解をしてはいけません。"物"を預かるというような寄託契約であれば、契約終了した後であっても、場合により受寄者に預かっている"物"の保管義務や返還交付義務が認められる余地はありますが、メールなどはちがいます。"預けているものだから、契約を解除されてもメールだけは欲しい"というような考えは通用しないのです。
 プロバイダーとの契約の中心は、あくまでもインターネットへの接続サービスであって、契約が解除されると、メールの利用のために付与されている"メールアドレス"は登録抹消、無効にされてしまいます。その際、ほとんどのプロバイダーは、被契約者アドレス宛のメールを保存している記録媒体部分から、受信メールを削除抹消しています。また、「取り残しのメールがある」と言われても、プロバイダーとしてはそれを確かめる義務も法律上認められていません。それだけでなく、本当にプロバイダーへ着信しているか否かの確認もできず、さらにプロバイダーにそれを調査する義務も認められないと考えられます。
 以上のように、インターネットやメールの世界は、"物"を授受する世界と異なり、自己責任の範囲が大きい世界なのです。メールの管理についても、基本的には自己責任ということがあてはまる世界なのです。ゆめゆめ、「私あてに送信されているはずのメールを下さい」などと言わなくてすむように、利用者自身で管理しなくてはなりません。

(弁護士 服部廣志 大阪・服部法律事務所)
契約条項を読み返してみよう
 プロバイダーとのインターネット接続契約の内容は、多少のちがいはあるものの、基本的には、
・サービス契約の締結について
・サービスの範囲、利用料金
・契約者、プロバイダーの義務等
・利用の制限、中止及び停止
・損害賠償等
 といったことが定められている。たとえ契約者が、実際に契約条項を未読だったとしても、手続きをすませ、サービスを利用している状態なってしまったら、契約者は契約条項を了解ずみとみなされるので、ご承知おきを。
 
 
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