ジャーナル


ネットJ「くらしの法律相談」バックナンバー

(Q)
30秒程度なら、音楽CDから録音して
ウェブに試聴コーナーを作ってもOK?
(A)
今後、一定の試聴が、許諾なしで利用できるケースが登場する可能性は十分ありますが、今のところは著作権法違反です。また、日本音楽著作権協会(JASRAC)が、ネット上での音楽使用料について、8月に文化庁へ認可申請しているので、注目しておくべきでしょう。
 
 
1枚の音楽CDにかかわる
さまざまな権利

 音楽CDには、作詞家や作曲家の音楽"著作権"と、"著作隣接権"という、大きく2つの権利がかかわっています。
 そもそも、音楽著作権とは、著作権法によると、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、(中略)音楽の範囲に属するもの」ですが、たとえば歌手は、歌唱によって著作物を伝達するだけで、歌うことで新たな著作物を創作しているわけではありません。原盤を制作するプロダクションやレコード会社、テレビやラジオの放送事業者らも同様です。
 しかし歌唱・演奏等にも、創作に準ずる創作行為はあるでしょう。また、制作者や放送事業者らにも一定の保護を与えなければ、結局は著作物としての楽曲の公正な利用が妨げられ、ひいては文化の発展が阻害される、という世界共通の認識もありました。そこで、彼らに対して著作権に準じた様々な権利が与えられるようになったのが"著作隣接権"です。その内容は、実演家、レコード制作者、放送事業者等が持つ複製権、送信可能化権等々、多岐にわたります。1枚の音楽CDをめぐって、著作権と著作隣接権が複雑に関連しあっているのです。
 JASRACは、音楽著作権の許諾及び使用料の徴収・分配業務を文化庁長官に許可された、現在のところ日本で唯一の組織です。一方、著作隣接権の権利処理については、JASRACのような独占的機関はなく、隣接権者らとの個別交渉が前提ですが、実際上は、各レコード会社がほぼ一手に権利処理を引き受けてきました。レコード会社は、歌手等の実演家と専属契約を結んだり、楽曲ごとに権利を買い取ったり、原盤制作プロダクションと原盤譲渡契約や原盤供給契約を締結するなどして、印税や譲渡代金と引き替えに、複製権等の著作隣接権を管理してきたのです。

レコード業界における
いわゆる"30秒ルール"の存在

 パッケージとしてのCDによる音楽の供給の時代は、以上のような処理で問題ありませんでした。しかし、インターネットの普及に伴いインタラクティブ配信が登場し、さまざまな問題が発生してきています。そのうちのひとつが"試聴サイト"問題です。実際、レコード業界には、いわゆる"30秒ルール"という慣行が、最近まで存在していたようです。これは、レコード会社が、自社で販売するCDなどの販売促進を狙って、音質を落としてインターネットで音楽を配信したもので、事実上、JASRACから許諾料等を徴収されずに運用されてきました。
 けれども、この"30秒ルール"は、隣接権者自身であるレコード会社にとってのルールであり、個人やほかの企業、団体には当てはまりません。つまり、30秒程度の無料試聴とはいえ、著作権等の制限を受け、無断開設が許される状況ではないのです。また、試聴サイトが個人的な非営利サイトであっても、ウェブ上に音楽ファイルをアップロードすることは"私的利用"と認められません。結局、音楽配信を許す特別のルールがない以上、無断で音楽CDの試聴サイトを作ることは、今のところ著作権も著作隣接権も侵害している、というほかないのです。

著作権にまつわる状況は
さらに変わりつつある

 今年8月、JASRACは、隣接権者である配信事業者団体のネットワーク音楽著作権連絡協議会(NMRC、http://www.enc.or.jp/nmrc/)と協議し、著作権使用料等について、文化庁に認可申請しました。申請内容によると、あらかじめ届け出た個人が、"1曲あたり45秒以内"や"リクエストを受けた画面から無料で配信実行する方式"などの諸条件を満たすなら、使用料を免除してよいことになるようです。さらに、オンラインでしか再生できない"ストリーミング方式"だけでなく、オフラインでも再生できる"ダウンロード方式"の場合でも、再生可能回数が3回以内ならば、使用料が免除になりそうです。しかしながら、レコード会社22社が加盟する日本レコード協会は、その申請内容に反発し、NMRCを脱退してしまいました。
 また、報道によれば、大手広告代理店や商社が音楽配信に関する著作隣接権管理業務に乗り出す意思を表明しているようです。文化庁としても、自由競争原理を導入したい意向のようで、権利処理ビジネスに新規参入する企業が今後増えていけば、著作隣接権の扱いについて、利用しやすくなることが期待されています。
 そうなると、音楽著作権をめぐる状況は、今後がらりと変わるかもしれません。それを見越して、いろいろな動きがあるのが現状なのです。

(弁護士 芳仲美惠子 芳仲美惠子法律事務所)
個人も音楽使用料を徴収される
 2000年8月上旬、JASRAC(http://www.jasrac.or.jp/)は、ネットや携帯端末を利用した音楽配信に対する音楽使用料を、文化庁へ認可申請した。認可されれば、ダウンロードによる商用音楽配信は1曲あたり料金の7.7パーセントが音楽使用料として徴収されるようになる(10月までに認可見込み)。また、個人が開設するような非商用についても音楽使用料を徴収するとし、ウェブ上に音楽ファイルをアップした段階で使用料が発生すると考えている。この場合、10曲まで年間1万円、10曲を超えるごとに1万円が加算されるようになる(2001年4月運用予定)。

日本音楽著作権協会
JASRACとNMRCが認可申請した音楽使用料規定の全文と、その内容の解説を参照することができる。
 
 
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