| ネットJ「くらしの法律相談」バックナンバー |
| (Q) 私の写真で卑猥なコラ画像をつくってぱらまいた犯人が許せない!! |
| (A) 犯人は、"わいせつ物頒布ないし公然陳列罪"、"名誉毀損罪"のほか、場合によっては"ストーカー行為等の規制等に関する法律"違反の罪が成立します。民事的には、犯人に対して不法行為に基づく慰謝料請求が可能です。なお、犯人をわいせつ物陳列罪以外の罪に問うには、被害者による告訴が必要です。 |
| 卑猥な画像をネットでばらまけば それだけで公然わいせつ物陳列罪 近ごろはヘアー解禁と言われて久しく、実際にこの画像が刑法上も"猥褻"に当たるのかどうか、具体的なものを見ずに判断するのは難しいところです。ただ、今のところ、基本的に性器が露出していれば猥褻に当たる、と言うことができるでしよう。 もし、そうした猥褻画像をネットでばらまけば、"わいせつ物頒布ないし公然陳列罪"(刑法175条)が成立します。 刑法175条によれば、「わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者」が処罰の対象となるわけですが、ここで"公然と陳列"とは、不特定又は多数人の観覧に達することが可能な状態におくことを言います。実際に、掲示板に載せる行為を"公然の陳列"に当たるとした判例があります。また、"頒布"とは不特定又は多数人に対して無料で交付することを言います。メールに添付するなどして多数の人にばらまけばこの"頒布"に当たるでしょう。 名誉毅損罪も成立する また、"公然"と"事実を摘示して"人の名誉を傷つければ、"名誉毀損罪"(刑法230条)が成立します。 事実の摘示がなければ侮辱罪にすぎませんが、事実の摘示の仕方は、漫画や写真による表現によっても可能とされています。猥褻な写真と被害者の顔写真を組み合わせたものなどを公衆の目に触れるところに提示した行為が名誉段損に当たるとされた実際の判例もあります。 なお、名誉毀損罪においては、写真は必ずしも"猥褻"でなくてもかまいません。わいせつ罪は風俗秩序を保護するための罰なので、処罰対象は風俗秩序を害する程度に"猥褻"なものでなければなりませんが、名誉段損罪は個人の名誉を保護するための罰なので、たとえば"猥褻"に当たらない程度の水着写真や、おもしろおかしい体型や服装などの写真などでも名誉は毀損されると言えるのです。 また、"公然"という概念についても、判例では"伝播(でんぱ:伝わるという意味)可能性"という理屈を使って、わいせつ罪よりもかなり狭く解釈しているようです。 さらに場合によっては、プロバイダーなど、管理運営する立場の者の責任を問える可能性もあります。たとえば、ばらまき行為が掲示板などの書き込みに伴って行なわれた場合には、その掲示板を設置しているプロバイダーや管理者なども、その内容について知りうる立場にあるわけです。そのような画像を削除せず一定期間放置すれば、責任を間われる場合も出てきます。パソコン通信時代のケースですが、裁判所が電子会議室の運営者であったニフティに対して、民事賠償責任を認めた例があります。 ストーカー行為に対してはまず警察に相談を そして、もし卑猥な画像をネットでばらまいた行為が、恋愛感情や、ふられた恨みなどの感情で行なわれたもので、しかも繰り返されているのであれば、"ストーカー行為等の規制等に関する法律"(いわゆる"ストーカー行為防止法")違反の罪が成立します。 同法は、平成12年11月に施行された新しい法律で、"ストーカー行為"を、同一の者に対して"つきまとい等"を反復してすることと定義しています。"つきまとい等"については、同法2条で[1]から[8]まで具体的に列挙されており、本件はその[8]に該当する可能性があります。 すなわち、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又は……」に対し、[8]「その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知りうる状態に置き、又はその性的差恥心を害する文書、図画その他のものを送付し若しくはその知りうる状態に置くこと」という行為に該当しそうです(この場合"図画を知りうる状態に置く"行為)。 この法律は、現実のつきまといによるストーカー被害が深刻であることを受けて立法されたものですが、いわゆるネットストーカー被害のケースにも対応できる仕組みになっています。 被害者は警察本部長等に対して、犯人への警告を求めることができ、警察本部長等は警告だけでなく、緊急性があると認められるときは、禁止命令を出すことができます。禁止命令等に違反してストーカー行為を行なった場合には、罪が重くなる仕組みになっています。犯人に心当たりがあれば、まず警察に相談に行ってみましょう。 (弁護士 芳仲美恵子 芳仲美恵子法律事務所) |
| キーワード |
| 【わいせつ物陳列罪】刑法175条には、「わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列したものは、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料の処する。販売の目的でこれらの物を所持したものも、同様とする」とある。 【名誉毀損罪】刑法230条には、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金に処する」とある。 【ストーカー防止法違反罪】ストーカー行為等の規制等に関する法律は、「ストーカー行為を処罰する等ストーカー行為等について必要な規制を行うとともに、その相手方に対する援助の措置等を定めることにより、個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏に資することを目的とする」(1条)。違反すれば「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」(13条)。さらに、禁止命令に違反してストーカー行為を行えば、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(14条)に処せられる。 |
| 一覧へ |