ジャーナル


ネットJ「くらしの法律相談」バックナンバー

(Q)
ホームページ作成やML投稿などで素人が陥りやすい法律違反は?
(A)
インターネット上での記載や発言行為などは、公然性を持つために、従来個人が日常生活で行う会話における発言行為などにはない規制を受けます。とりわけ、名誉を毀損する行為や著作権法を侵す行為などは、日常生活の延長でうっかり行ってしまうことが多いので、特に注意が必要です。
 
 
公然性を持つネット上での会話・表現
 通常、私たちの会話は、1対1ないし一それに準じた人数の場での会話がほとんどです。人数が比較的多い場合でも、特定の友人、知人らの間での会話がほとんどでしょう。仮に多くの人を相手として話をするような場合には、用心して言葉を選びながら話をするのが普通でしょう。
 一方、インターネットは世界中につながっています。個人的に"ホームページ"を作成して公開すれば、世界中の人々がそのぺージを見られますし、"掲示板"もそこに書き込んだ内容は、その掲示板にアクセスできるすべての人に公表していることになります。"メーリングリスト"(ML)についても、それが参加自由ならば、そこに投稿した内容は、そのML参加者全員、すなわち自分の見知らぬ多数の人へも届くことになります。
 このようなホームページ、掲示板やML上での発言は、その会話や表現の相手が従来のように"特定の人"を対象とするものではなく、"不特定の人"や"多教の人"を相手とすることになります。これを法律的には「不特定又は多数の人を相手とする」と言います。
 ちなみに、実際の相手が、少人数であっても不特定の人を相手とする場合や、特定の人々であっても多数の人を相手とする場合は、いずれも「不特定又は多数の人を相手とする」ことに該当します(大審院昭和6年6月19日判決)。
 このように「不特定又は多数の人を相手としていること」を法律上、「公然」(秘密でないこと)と言います。そのような性質を有する発言や表現行為は「公然となされたもの」とされ、この「公然」という要件を備えた発言や各種の表現行為は、そうでない場合とまったく異なった評価を受けることになります。

公然性のある言動や表現に対する規制
 公然性のある言動、表現に対する規制としては、大きく刑法(さらには民法、場合によっては労働法に関わる)によるものと、著作権法によるものがあります。
 たとえば、掲示板への記載やMLへの投稿などにより公然と他人を侮辱するような発言をしたり、また公然と他人の名誉を毀損するような発言をしたりすると一刑法で処罰される犯罪となります。
 たとえ、日常会話の中で「誰それはバカだ」とか「誰それは女に狂っている」というような会話をして、そのような言動が問題とされなかったとしても、「他人の名誉を段損したり、他人を侮辱する」発言を「公然一といううなかで行うと刑法で処罰される対象となるのです。
 また、このように刑法で処罰される行為を行なえば、民事上も不法行為にあたることとなり、損害賠償の責任を負わされることになります(民法709条)。
 さらに、こうした行為を会社内のメールや掲示板などで行なえば、社内の秩序を乱したということで、会社から懲戒処分を受けるなどの不利益が待っています。
 ホームページや掲示板への掲載、MLへの投稿は、日常生活上の会話とは"まったく異質なもの"なのです。
 もう一方の、著作権法による規制についてですが、たとえば、日頃私たちは、新聞や雑誌、書籍の一部をコピーしたり、メモして保管したりすることが珍しくありません。このような行為は、「私的使用のための複製」(著作権法30条)などとして著作権法上も許されています。
 ところが、このように日常的な行為であっても、同種の行為をしたうえホームページに転載したり、MLに転載投稿したりすると、著作権侵害となり、そのぺ-ジの使用の差し止め請求や、損害賠償請求を受ける危険性があるのです(著作権法10条、民法709条)。
 これは、ホームページヘの掲載やMLへの投稿が原則として「公然」という特性を帯びるため、著作権法が認める「私的使用」という範疇を逸脱し、その結果、著作権法違反となるからです。
 よく見られるのは、気に入ったエッセイや詩一歌詞などをホームページに転載する例です。悪意がないことは理解できますし、仮に著作権者がそれを発見しても「著作権侵害である」と抗議をしない場合もあるでしょう。しかし、常にそうである保証はありません。著作権侵害という法律違反行為となる危険性があることを知っておく必要があるのです。私たちは、インターネットという簡便かつ強力な通信・自己表現手段を手にしたときから、私たちの日常生活にほとんど関係のなかった刑法の規定や著作権法、民法の不法行為規定など、各種の法律による規制を身近に受けているのです。犯罪や損害賠償請求というようなことは、自分とは無関係の世界のできごとなどと考えないようにしたいものです。

(弁護士 服部廣志 服部法律事務所)
キーワード
【侮辱と名誉毀損】侮辱と名誉毀損はいずれも、人の"名誉"を毀損するものとされています。その違いは、名誉毀損が"具体的な事実を指摘したうえで"他人の名誉を毀損する場合を言い、"具体的な事実を指摘しないで"他人の名誉を毀損する場合は侮辱の罪にあたるとされています。
「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処す」(刑法230条1項)、また「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処す」(刑法231条)と規定されています。

【民法709条】故意又は過失に因りて他人の権利を侵害したる者は之に因りて商事たる損害を賠償する責めに任ず。

【著作権法】著作権法は、著作者の死後50年間又は著作物の公表後50年間、著作者の公表権、氏名表示権、同一性保持権、複製権、上演権、演奏権、放送権、優先送信権、口述権、展示権、上映権、頒布権、貸与権、翻訳権、二次的著作物利用権など、各種の権利を保持しています。
 
 
一覧へ
 

JOURNAL目次

--HOME--
Copyright(c)2000-2005 Legal Communications Inc. : info@houtal.com