| アメリカロースクール日記 全14回 岡本亜紀子(American University, Washington College
of Law, LL.M. 在学中)
|
| 第9回「ここにいるだけで、世界を感じられるのよ」 |
| 「ここにいるだけで、世界を感じられるのよ」母校(中央大学)の後輩たちが、夏休みを利用してわがロースクールを訪れたとき、真っ先にそういう自分に気がついた。 夏学期のすべての過程が終了し、あとはただ本当に卒業できたのかどうかを確認するだけとなった、8月中旬のある日、思いがけず、母校の後輩たちにロースクールを紹介するという機会を得た。現在、わが両母校は、奇しくもいろいろな面で提携関係を結びつつあるいい関係にある。 そのなかのひとつのプログラムとして、夏季の英語研修というのがあるそうだ。それに参加している学生の多くが、法学部の学生ということで、今回のロースクールツアーが企画されることとなり、もうすぐここのロースクールの卒業生になる私にもガイドとしての働くようにとのお達しがあった。 ともかく、だれもかれもがフレンドリーであるというのが、このロースクールのカラーであるが、この日も、LL.M.学部長先生であるブラッドロー教授(第5回参照)、ポッパー教授、その他の職員、ロレッタ、クリスティーナ、サンドラ(第3回参照)、チェルシーがかわるがわるそれぞれの立場から見たロースクールを語ってくれた。 アメリカのロースクールとはどんなところか、LL.M.で何を学ぶか、JDコースとLL.M.コースとの違い、アメリカの司法制度、ロースクール入学までの手続き、ロースクールを卒業したあとのこと…等々。 これをここに入る前に聞けたらよかったな、と思いつつも、いまや卒業しようとしているからこそわかることもあり、当の学生たちよりも、私のほうが聞き入ってしまっているような気さえした。 それと同時に、みなが語るロースクール像が、私が去年の12月以来、このエッセー上で描いてきたロースクール像と一致していることを感じ、嬉しく思った。正確にいえば、ロースクール像というよりも、LL.M.像といったほうがいいかもしれない。 ともあれ、そのLL.M.像とは、一言でいうと、「ここにいるだけで、世界を感じられる」という環境のことであったと私は思っている。もちろん、ロースクール全体としての位置付け(全米ランキング)、バーエグザムの合格率、就職率など、だれもが気にする「ロースクールとしての質」の問題も、LL.M.像を構成する大切な要素であるということはまちがいない。 しかし、アメリカンユニバーシティ、ワシントンカレッジオブロー、LL.M.というプログラムの一番の特性は、ここにいるだけで世界を感じられる「多様性」であったといましみじみ思う。 「ここの学生は、世界のあらゆる所からきていて、卒業したらまた、母国にもどっていく。ここで学んだことを、各卒業生の属する国、組織、会社で活かすためにね。だから、アメリカのバーエグザムに受かる必要性は必ずしもないんだよ」 ブラッドロー教授は、ロースクール=バーエグザムという公式を描きがちな日本の学生に何度もこういって、既成のロースクール像を壊そうと試みているように見えた。多分それが、わがLL.M.の目指す姿なのだろう。先日、ファイナンシャルタイムズという新聞の取材に答えたときにも、ブラッドロー教授はその点を強調していたように思う。1 「ここにいるだけで、世界を感じられるのよ」私は、LL.M.の卒業資格があれば、日本人でもアメリカのバーエグザムを受けることができ(第8回参照)、その資格を持って活躍している日本人の先輩もたくさんいることを話した上で、でも、一番私がここで学んでよかったと思うのは、この点だったと後輩たちに話した。もしこの1年間、この多様性を意識せずにすごしていたら、多分、いまここで、この後輩たちに全米ランキングでは特別上位に位置していないこのロースクール のことを心から薦めたりできなかったと思うから。 1 http://globalarchive.ft.com/globalarchive/articles.html ?id=010723000870&query=washington+college+of+law http://www.usnews.com/usnews/edu/beyond/gradrank/gdlawnf.htm http://www.usnews.com/usnews/edu/beyond/gradrank/gblawsp6.htm |