| アメリカロースクール日記 全14回 岡本亜紀子(American University, Washington College
of Law, LL.M. 在学中)
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| 第8回「自分の選んだ道だから」 |
| 「自分の選んだ道だから」韓国人のゆりちゃん(彼女は日本語がとても上手なので、つい「ちゃん付け」で呼んでしまう)は、そういって、毎晩1時まで学校でバーエグザム(米国司法試験)の勉強をしていると話してくれた。 5月中旬に期末テストが終わると、あるものは夏学期の講義に参加し、または、インターンシップを始め(第7回参照)、そしてあるものは、7月下旬に全米各地で行われるバーエグザムの準備を始める。 去年の秋、ここのロースクールに入学するまで、私はバーエグザムのことは、何一つ知らなかった。もともと、アメリカでローヤーになるつもりもなく、今後の仕事にローヤーの資格が必要とも思わなかったためであるが、クラスメートの多くは、バーエグザムを受けるためにここにやってきたという人も少なくない。 外国人である私たちが、バーエグザムを受けるためには、いくつか条件があるらしい。まずABA(America Bar Association) 認定のロースクールのDJコースを卒業すれば、すべての州のバーエグザムを受けることができる。一方、私のように外国のロースクール(法学部)を卒業し、そのあとLL.M.の学位を取った者には、いくつか制限がある。まず、LL.M.の学位で受験資格を与えた実績のある州は2〜3州とか。しかも、規定単位数20のうち5単位以上、ドメスティックロー(つまりアメリカ法)の講義をとらなければいけないらしい。 LL.M.を終了した者に明文で受験資格を与える旨示しているということと、国際ビジネスのさかんな街、ニューヨークシティを抱えているということから、多くの外国人LL.M.卒業生はニューヨーク州バーエグザムを受けるらしい。 いまのところ、私自身はバーエグザムを受けるつもりはないので、すべての情報に関して「らしい」ということになってしまうが、受験の意志のある人にはいろいろ情報を得る手段があるということは、これを読んでいらっしゃる読者の方々のほうがよくご存知でしょう(参考までに http://www.barbri.com/)。 私の乏しい経験からいっても、少なくとも日本では、法学部での4年間の勉強のほかに、数年間の準備期間をへて、初めて合格するのが司法試験であると思っていたのであるが、ここでは、バーエグザム専門の受験予備校バーブリが行う2ヶ月の講義、模擬試験だけが、いわゆる受験勉強ということになるらしい。 もちろん、ここアメリカでは、一番合格率の低い州のそれにしても、40%ということなので、日本の1桁合格の世界とは比べることはできないが、だからといって、バーエグザムが簡単な試験か、といえばもちろんそんなことはなく、知り合いの優秀なアメリカ人弁護士にも「あれは、拷問だ」といわしめるほどの、集中的ながり勉が必要なのはいうまでもない。さらに外国人であればなおさら、であろう。 この時期、「なぜ、バーエグザムを受けないのか」と日本にいる知り合いなどによく聞かれる。 ロースクールで学べることはたくさんある。私の場合は、ここのロースクールの、国際関係法に強いという点に注目し、ここを選び、そして実際、生きた国際法を学べたと思う。とくに、ここで実際出会った多くの教授、クラスメートから、講義や教科書からだけでは知ることのできない、「国際感覚」を感じとれたのは大きな財産であった。私は、ここにきて以来、「日本でできないことは何か」という質問をいつも自分自身に問い、そしてその「日本ではできないこと」を求めてこの1年間を過ごしてきた。そしてその道の途中に、バーエグザムはなかっただけである。 道はそれぞれ違う。生まれたところも育ったところも何もかも違うクラスメートを見ていると、そんなことも、あっさりと私の心に入ってくるようになった。 ここでは、夏が別れのとき。みながそれぞれの道を見つけて歩み出す季節。雪の降るなか、帰国していく仲間、新しい世界へと旅立つ仲間を見送らなくてすんだことが幸いだと思う今日このごろである。 |