| アメリカロースクール日記 全14回 岡本亜紀子(American University, Washington College
of Law, LL.M. 在学中)
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| 第3回「あなたはローヤーなのよ」 | ||
| 「あなたはローヤーなのよ」サンドラ(International Career Advisor)は私にいい聞かせるようにいった。夏学期にインターンシップ*をしようと思って書いた履歴書(レジュメ)が、私という「売り物」をぜんぜん宣伝していないとしかられたときのことだ。 「アキコは日本ですでにロースクールをでているのだし、そしていま、またここでロースクールを卒業するために勉強しているんでしょ。そういう人のことをローヤーっていうのよ。忘れないで」 なにごとも控えめに、自分をほめるなんてとんでもないという日本的な感覚で書いたレジュメはここではまったく役に立たないらしい。それはわかるとしても、私がローヤーだなんて…。「日本では司法試験に受からないと仕事もできないし、ローヤーとも呼ばれないのよ」と一応、確認のために反論してみたが、「ここはアメリカ。日本じゃないの。アキコは実務をしたことがないだけ」と一蹴された。「私ってローヤーなの?」これは、びっくりだわ。
そのひとつが図書館利用のための訓練だ。ローライブラリーというのは、普通の図書館とはちょっと違う。その詳細はここでは書かないけれど、その構造はまさに合理的で、使い方さえわかれば膨大な資料からでも、目当ての資料が即座に手に入れられる。図書館を上手に使えれば、まずはローヤーとして合格、といったら大げさかもしれないが、ロースクールに入った洗礼がこの図書館利用の訓練なのではないかとさえ思う。 また、この訓練のなかにはインターネットによるデータベースの利用法もふくまれている。ロースクールの学生は、レクシス、ウエストローという2大データベース会社から、将来のお客さまとして手厚くもてなされる(学生の間は無料で使い放題。学期の始めには2つの会社からインストラクターがやってきて懇切丁寧に使い方を教えてくれる)こともあり、ほとんどの学生がこれらをフル活用している。 「ローヤーに一番必要なものは、文章力だ」とよくいわれるが、リーガルライティングのクラス(ファームミーティング・第1話参照)は、まさにローヤーに必要不可欠な文章力をつけるための、「書き方トレーニング教室」である。ここで、メモランダム、リサーチペーパーの書きかた、文献、判例の引用のしかたを一から教えこまれる。 入学したてのころ、こんなことばかり教えられて、ロースクールに入学した気がしないな、と思ったものだが、これらの訓練なくしては勉強するという次元にも入ることができないのだと、しばらくして気づいた。そして、これらの能力こそがローヤーの日常になくてはならないものなのだろう。 春学期も始まった1月の下旬、依然として、夏学期のためのインターンシップ先を探していた私は、どんなチャンスも逃してはいけないとサンドラにはっぱをかけられ、アジア系弁護士会主催の集まりに出席した。数人のローヤーによるパネルディスカッションをきいたあと、目当てのローヤーのところにいき、すきあればレジュメを押しつけるという、学生のための仕事探しの場である。 だいたい、ローヤーというのはアメリカ人のなかでも口の達者な人たちだから、自分のまずい英語がよけいに目立ってしまう。しかも、私はしがない一学生。もちろん、日本の弁護士資格を持っているわけでもない…。 「そうだ、私はローヤーだったわ」 サンドラからは、日本とはまったくといっていいほど違うレジュメの書きかたも、手取り足取り教えてもらったけれど、その会合で、私がアメリカ人の学生に混じって、何人ものローヤーにレジュメを押しつけてこられたのは、このことばのおかげだったのではないかと思っている。 *実際に働きながら、単位を取得できるという制度。 |