ジャーナル


アメリカロースクール日記 全14回
岡本亜紀子(American University, Washington College of Law, LL.M. 在学中)
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第2回「国に帰ったときのいい思い出になる」
 「国に帰ったときのいい思い出になる」これは、LL.M.の学生の口癖だ。
私のかようロースクールのLL.M.プログラムは基本的に3セメスターで卒業が可能であるためほとんどの学生が1年ですべてのコースを終える。くわえて、このプログラムは学生の90%が「外人」でしめられていることを特徴としており、結果、1年後にはほとんどが国に帰っていく。国では、すでに法学士を取得している人ばかりの集まりであるから、帰ってからの職がすでに決まっている人も多く、クラスでの発言もすでに仕事をしたことのある人にしかいえない、深みのあるものが少なくない。彼らからは、1年間でできるだけたくさんのことを学んで、国に帰ったら第一線で活躍するんだ、という意気込みをつねに感じる。
 そんな平均年齢30歳ちょっと(推定)の野心もキャリアのある人たちの集まりであるLL.M.は、催し物の多さと、その参加率の高さでも他を圧倒している。月曜日から金曜日まではほとんどの学生が「ロースクールの学生は図書館に住む」とだれかがいっていたとおり、リーディングの課題とペーパー書きにいそしんでいるが、金曜日の夜からはウィークデー以上に忙しくなる。その遊びかたは刹那的といいたくなるほどだ。
 それはただの勉強の息抜きではない。世界63カ国から集まっている同級生たちは1年という短期間に、知識だけでなく、できるだけ多くの思い出を作ろうと余念がないのだ。だれもがプライドが高く、国を背負ってたつかのような勢い(実際そういう立場の人も多いし)である彼らはときに付き合いづらい高飛車な青年たちであるのだけれど、パーティではだれもが普通の若者の素顔にもどる。つねにカメラを持ち歩き、いい思い出になりそうなカットはもらさずフィルムにおさめ、それを後日、交換し合うのは最近では習慣となっている。1年後に離れ離れになることを意識しているからこそ、今このときをいい思い出として記憶に残しておきたい、という差し迫った雰囲気がいつも私たちの間にはある。
 先日、ハロウィーンパーティのときの写真をメキシコ人の友だち(25歳の若いローヤー)からもらった。その彼の顔はパンダのように白黒にぬられていて、私はその彼と肩をくんで楽しそうに笑っているというものだ。その写真の裏には、この写真を私にプレゼントするといった短いコメントと、彼の名前、そして最後に「2000年10月31日 ワシントンDCにて」と(もちろん英語で)書かれていた。それはまさに1年後の別れを想定したコメントで、ちょっと悲しかった。たしかに「国に帰ったときのいい思い出」にはなるだろうけど。
 「1年で修士号がとれる」から入ったはずの1年間のプログラムだが、それゆえの寂しさを感じた瞬間だった。

 *International Legal Studies Program
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